リクエストを頂いたので、タンパク質、アミノ酸の話をします。
タンパク質とその最小単位、アミノ酸
まず、みなさんご存知、そして大好きなタンパク質は、身体のあらゆる部分に含まれる構成物質です。これが特にアスリートに重要な理由は、筋肉の主な主成分であるからです。
アスリートは基本的に、筋肉の破壊と再生を繰り返すことによってその筋肉を太くし、パフォーマンスを向上させていくので、筋肉の材料となるタンパク質は意識して摂取しなければなりません。
糖と同じように、身体はタンパク質をそのままの形では吸収できないので、体内にある酵素を利用して、吸収できる小さな形まで切断していきます。この小さな形をアミノ酸と呼びます。世の中で発見されているアミノ酸は500種類以上ありますが、人間の体を構成しているのはそのうち20種類ほどで、さらにその中の11種類に関しては、ヒトは食事を取らずとも自分で合成する能力を持っています。しかし、残りの9種類に関しては体内で合成できないので、食事によって吸収する必要があります。これを必須アミノ酸(EAA)と呼んでいます。生きていくのに「必須」な「アミノ酸」なので。
一味違うアミノ酸、BCAA
さて、このようにタンパク質は一旦アミノ酸の形まで小さく分解されてから吸収され、その後全身に配られ我々の血肉となるのですが、アミノ酸の中には一部材料としてだけではなく、体の働きをサポートするような働きをするアミノ酸もあります。それが分岐鎖アミノ酸、通称BCAAと言われるもので、バリン、イソロイシン、ロイシンの3種類のことを総称でそう呼びます。
まずロイシンの働きとしては、筋肉をエネルギー源として使うのを抑制してくれます。運動をすると、糖、脂肪をエネルギーとして主に使用しますが、筋肉も一定量エネルギー源として分解して利用されてしまうことがわかっています。ここで、ロイシンはその分解機能を抑制し、筋肉は筋肉のままキープしてくれるサポートをしてくれるのです。冷蔵庫に入れといたプリンにそっと名前を書いてくれる奴です。これはとっておきたいやつだから食べないでねって。
加えて、イソロイシンとバリンはインスリンの働きを助けて、筋肉内に糖分を引き込むのをサポートしてくれます。運動で糖を使い切り、はらぺこになった筋肉にご飯をどんどん与えてくれる学食のおばちゃん的な存在です。これにより、筋肉内に貯めておく糖の回復も促進されます。
これらの作用により、運動前、運動中にBCAAを摂取しておくと、運動後の筋肉痛を抑制、疲労回復に効果があると研究によってわかっています。BCAAに関しては、筋肉の材料となるタンパク質というよりは、筋肉の保護に努めてくれるサポーターとして認識した方が良いかと思います。
ダイレクトに筋肉へ届くEAA
体内で合成できないアミノ酸を必須アミノ酸(以後EAA)とよびます。
市販されている多くのプロテインは、人の身体を構成する20種類のタンパク質を全て含んでいますが、それとは別にEAAのみのサプリメントも販売されています。
EAAサプリメントの大きなメリットとしては、すでにアミノ酸の形であるため分解の必要がなく、吸収が早いことです。プロテインパウダーに含まれるタンパク質は、消化酵素を利用してアミノ酸の形まで分解する必要があります。そのため、摂取から血中に吸収されるまでにタイムラグが生じます。
一方でEAAサプリメントはすでにアミノ酸まで分解された状態であるため、すぐに血中に取り込まれ、筋肉の材料となっていきます。この時間差が最終的に筋肉合成速度に差を生むと考えられています。
運動するとどうしても筋肉はエネルギー源として分解されていきます。まるで筋肉という容器に穴が空いてしまうと、そこからどんどん水が漏れててしまうように、筋肉も分解されてしまうのです。タンパク質はこの穴を塞ぐパッチであり、できるだけ早く穴をふさげば最終的に漏れ出ていく水の量は少なくなります。これがEAAに筋肥大効果が見込める理由です。
BCAAとEAAの違い
BCAAと比較し、EAAのデメリットは、とにかく高い。BCAAやプロテインパウダーと比べてコスパの悪さは否めません。加えて、まだ研究が進んでいない点も気になります。いくつか論文を探してみたものの、質・量共に十分ではありません。今後の研究が進み、また大きく変わる可能性も多いに残っています。
コスパ重視はBCAA 余裕があるならEAA
私個人の意見としては、資金に余裕があるのであれば試すのもありかな、と思っています。EAAにはBCAAも含まれているので、筋肉の保護作用も期待できるからです。