みなさんこんにちは。らんです。
今日はリクエストいただいたアトピーと運動の関連についてお話します。
なにを隠そうわたしもアトピー持ちで、乳幼児に発症してから30年近くの付き合いなのです。患者目線と医者目線、そしてアスリート目線から、アトピー性皮膚炎についてまとめました。
アトピーは肌質の一種と心得よ
アトピー性皮膚炎とは皮膚にアレルギー性の炎症を繰り返す病気です。
このアトピーですが、もともとの肌質がアレルギーを起こしやすいタイプであることが多いのです。
言ってしまえば生まれつきの肌質です。これは残念ながら変えることはできません。ですので、アトピーにおいては完治という概念はないと考えます。これは意見は分かれるでしょうが、個人的には病気というよりも肌質だと考えてます。
もともと痒みが起きやすい肌質であることを受け入れ、日々のケアを徹底し、痒みが起きずに落ち着いている状態を維持することが治療の目標になります。
詳しくはこちらのサイトがわかりやすいのでおすすめです。
治療の大原則は保湿
アトピー素因のある肌は乾燥肌であることが多いのです。皮膚本来の役割は、外部刺激から守ることですが、皮膚が乾燥しているとこのバリア機能が低下し、刺激に弱くなります。
しかし、ご安心ください。どんな乾燥肌でも、保湿をすることでこのバリア機能を取り戻すことができるのです。このためアトピーの基本治療は保湿になります。皮膚の炎症状態に合わせて、ステロイド外用薬や免疫抑制剤を重ねていきますが、炎症が起きていなくても保湿は必ず継続します。
保湿をすることは、いわば炎症の起きにくい頑丈な肌を作っていく作業です。これによって痒くなる発作を抑えることができます。
アトピー肌に運動は味方
かつて、アトピーは汗をかくと悪化すると考えられていました。
しかし、研究が進み、汗は皮膚の保湿や代謝を正常化することでむしろアトピーを改善させるものだとわかってきたのです。アトピー患者の場合、健常者の皮膚と比べて発汗機能が低下していることがわかっています。これは生まれつき汗腺が少ない、皮膚を掻き壊して汗腺組織が破壊されている、などが原因と考えられています。アトピー患者にとって正常な発汗機能を取り戻すことは一つの治療目標であり、この点で運動は非常に有効な方法です。
さらに、長期間の運動はアトピーにかかわらず他のアレルギー性疾患に対しても改善効果が認められています。詳しくは花粉症のページをご参照
アトピー持ちが運動するときの注意点
アトピーもちにとって運動は是非とも続けて欲しい習慣です。一方で運動によってアトピーが悪化することもあります。できるだけ悪化を避けるため、アトピーをお持ちの方で運動をするときの注意点を以下に列挙します。これはお子さんにも使えるテクニックなので是非ご参考ください。
1.熱を逃がす衣服と環境
汗は味方ですが皮膚表面の熱はかゆみの原因となります。できるだけ皮膚の熱を逃がす工夫をしましょう。
自転車ウェアはタイトなシルエットが多いですが、通気性が良いので皮膚熱が溜まりにくい傾向にあります。反対に一般的な服だと袖やベルト部分で圧迫されて皮疹が出やすくなりますので注意です。
服の素材に関しては特に指定はありませんが、個人によって反応しやすい素材としにくい素材があるかと思います。研究してみましょう。
冬の運動では、着込みすぎも問題です。自転車は全身運動なので乗っているとすぐに体温が上がって暑くなってきます。運動開始時はちょっと寒いくらいがちょうど良い服装です。
注意すべきなのは室内トレーニングの場合。
扇風機などを利用して風が常に通る環境を作り、着用する服は締め付けのないものを選びましょう。
2. 汗を放置しない
汗には先述のとおり素晴らしい効果があります。一方で、その効果は汗をかいた後1時間ほどすると消えており、それ以上汗を放置すると菌が繁殖する原因となってしまいます。そのため、汗をかいたら放置せず、すぐに入浴して流してしまいましょう。
といってもロングライドの場合、すぐに入れないこともありますよね。その場合は、発疹の出やすいところだけ洗うのも手です。私の場合、首と両肘内側に出やすいため、ライドの途中でたち寄ったトイレで首と肘の内側だけ流水で洗っています。(もちろんそのあとは流し台を綺麗に拭いてます!)
どうしてもお風呂に入れない場合は、着替えがあるとなお良いです。
3. 肌を乾燥させない
アトピー肌の方は往々にして乾燥肌です。ですので大前提として普通肌の人よりも頻回な保湿が必要になります。加えて、アスリートになると、自然とシャワーをたくさん浴びる傾向にあります。
入浴も繰り返すと皮膚乾燥の原因になるため、風呂に入った場合はその都度しっかり保湿しましょう。
おすすめは入浴後、そのまま浴室保湿です。
私はお風呂場に馬油を常備。タオルで体を拭く前に保湿してます。
保湿のタイミングはいつでも構いません。
私は自宅と外出先でも1日8回以上は何らかの形で保湿しております。ここまでしろ、とは言いませんが、皮膚乾燥はアトピー増悪因子ですので乾燥に気がついたらすぐに保湿できるように備えておきましょう。(私はライドにも保湿剤持っていくよ!)
4. 炎症がおきたら迷わずステロイドを使う
アトピーで痒みが出ている状態は、いわば出火している緊急事態です。この時は、とにかく火を消して被害を最小限に抑える必要があります。この鎮火の仕事をステロイドが行います。
ステロイドは大変よく効く薬なのですが、非常に誤解されている薬でもあります。「子供に使うのが心配」「ドーピングにならないか心配」という話もチラホラと耳にします。
多量に使えば確かにいろいろな副作用を生みます。また筋肉増強効果もあり、ドーピング薬として指定されている薬です。しかし、皮膚に塗る外用薬でドーピングレベルまで達することは理論上ありません。なぜなら口から飲んで消化管で吸収する場合と皮膚に塗った場合、ステロイドの吸収効率は全く違うため、皮膚経由で副作用が問題になるほど血中濃度があがることはありえないからです。
心配するような副作用は外用薬では起きませんので、少しでも痒みを感じたら、迷わずステロイド外用薬を使いましょう。
5. 紫外線対策
理由は2つあります。
一つは紫外線が肌を乾燥させるため。皮膚の乾燥はアトピーの増悪因子だからです。
2つめは、色素沈着を予防するためです。
「色素沈着はステロイドのせい」と誤解されていますが、これは科学的にばっさりと否定されています。
色素沈着は傷ついた皮膚組織が治る過程で起こる正常な反応です。炎症がひと段落した部位は色調が濃く見えますが、傷ついた皮膚が再生している工程でありこれは正常な肌質でもみられる所見です。しかしこの再生途中の皮膚に対して、強い日光が当たってしまうとメラニン色素の沈着をおこし、結果として傷跡として残ってしまいます。
そこで傷跡をきれいに治すために紫外線対策をしましょう。ライド中はアームカバーをお勧めします。また、ライドする時間を早朝や夜間にずらす作戦も、熱中症予防という観点からもオススメです。
(ここでの紫外線は、いわゆる直射日光に含まれる日焼けを起こす紫外線のことです。アトピーの治療である光線療法とは別物です。紫外線と一言で行っても様々なんですね)
6. 汗の拭き方
汗をゴシゴシ拭いてしまうと、皮膚バリアを破壊してしまいます。特に濡れた皮膚だとより壊れやすい状態になっているため、汗は拭くのではなくタオルに吸わせるようにしましょう。
イメージは柔らかいティッシュを顔の上にふわっと乗せるように。そして横に動かさない。タオルは縦移動のみ。
田中みな実だってベッタベタに塗ってるよ?
美肌=健康な肌を維持するためには、アトピーでもそうじゃなくても徹底的な保湿が欠かせません。アトピー素因のある方は、健常者の肌よりもより乾燥しているため、保湿がより必要になるのは自然なことです。
そもそもの話ですが、美しい肌の持ち主は往々にして保湿を徹底しています。かの田中みな実だって「保湿命」を公言されています。
事務所HPから。いつみても美しい…..。
アトピーでもそうじゃなくても保湿は美肌のために徹底しましょうね。
まとめ
・アトピーは完治ではなくコントロールを目標に
・汗はたくさんかいて、放置しない
・保 湿 絶 対
・ステロイドは遠慮なく使う
・紫外線対策を怠るな
・タオルはふわっと
・田中みな実はかわいい
The Impact of Formula Choice for the Management of Pediatric Cow’s Milk Allergy on the Occurrence of other Allergic Manifestations: The Atopic March Cohort Study
J Pediatric, 2021 Jan 29;S0022-3476
Can moderate-intensity aerobic exercise ameliorate atopic dermatitis?
Why does sweat lead to the development of itch in atopic dermatitis?
Experimental Dermatology December 2019 Pages 1416-1421