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プロ(医師)もやっている傷の治療をご家庭でも

(♪今日の料理オープニング曲)

みなさんこんにちは。今日はご家庭でも本格、プロの治療ができるレシピをご紹介します。

擦り傷は自転車競技ではつきものの怪我ですね。さて、この擦り傷、正式には擦過傷と呼ばれる傷ですが、プロの世界では(臨床現場では)湿潤療法という治療で治すのが現在の主流です。

この湿潤療法、ご家庭でも道具を揃えれば簡単に実施できて、傷を綺麗に直すことができます。

注:解説の中で擦り傷写真が登場します。傷は本物の写真ではありませんが、極端に苦手な方はこのままそっとページを閉じましょう。

 


材料(一人分)

・ハンドソープ(泡で出るもの)・・・傷が覆われる量

・ハイドロ被覆材(後述)・・・傷が覆える大きさ

・ワセリン・・・ひとつまみ

 

作り方


1.洗浄

泡で出るタイプのボディソープやハンドソープで傷口を撫でるように洗います。傷口の中に砂利が残っていると感染の原因となりますので、徹底的に洗い出すようにしましょう。細かい砂利が取れない場合は、毛先の柔らかい歯ブラシなどが便利です。

よく勘違いされていることですが、傷口に消毒の必要はありません。消毒液は細菌やウィルスに効果はありますが、同時に人の細胞にも障害作用があります。健康な皮膚表面であれば問題になりませんが、傷ついた皮膚表面に塗ってしまうと新しい細胞を傷つけてしまうことになるので治癒が遅くなります。基本的には泡洗浄+水で流すで十分です。

 

2. 覆材を貼る

ハイドロコロイド材と呼ばれる傷を密閉する絆創膏を、1cm程度の余白を残した大きさにカットし、創部に貼ります。この絆創膏は傷の内側から出てくる栄養たっぷりの液体を外に逃さずに内側に閉じ込めます。これによって傷が潤った状態で保持され、傷の治りが早くなります。

 

ハイドロコロイド材を貼ってしばらくすると、傷口から液が分泌され、内部に溜まってきます。絆創膏は白くぷくっと膨れたようになります。この液体は傷の再生に非常に役立つものなので、漏れないようにそのまま貼っておきます。

 

ハイドロコロイド材の交換時期は中の液が漏れ出した時です。液の漏れがない場合は最大5日程度は貼りっぱなしでも大丈夫。ハイドロコロイド材を貼っていても傷が白く膨れなくなった時が剥がし時です。

この時、下の傷口では何が起きているのでしょうか。
下の写真は、皮膚モデル組織(偽物の皮膚)を使用した傷の再生過程です。

参照元:Evaluation of BepanGel Hydrogel Efficacy and Tolerability Using an Abrasive Wound Model in a Within-Person, Single-Center, Randomized, Investigator-Blind Clinical Investigation

湿潤療法ではかさぶたが形成されません。

傷の内側にあたらしい皮膚の元になる細胞が出現し、傷全体が徐々にピンク色になり、最終的にはつるっとした表面に戻ります。これを上皮化と呼びます。

 

さて、このハイドロコロイド材を使う時に大事なことは、貼る前に必ず綺麗に洗浄すること。このタイプの絆創膏は内部に菌がいる状態で貼ってしまうと、あっという間に感染が広がってしまいます。このハイドロコロイドと呼ばれる絆創膏は、細胞に優しい設計になっているのですが、それは菌にとっても優しい環境ということです。そのため従来型の乾燥を促す絆創膏よりも、細菌の増殖が早くなってしまいます。湿潤療法の絆創膏を使用するときは必ず創部を洗浄して、すぐに貼りましょう。

 

さて、ひと昔前にこの湿潤療法がもてはやされ、傷の乾燥を防ぐために食品用ラップを巻く方法(ラップ療法)が紹介されていました。確かにラップは傷口の乾燥を防いでくれますし、家庭にもある素材なので気軽に使えますが、ラップはハイドロコロイドの完璧な代用品にはなりません。

ハイドロコロイドは水分を透過させませんが、水蒸気は通す素材です。これにより肌の蒸れを防ぐ構造になっています。一方、食品用ラップは水蒸気も通さない素材ですので、傷のない正常な皮膚の部分が蒸れによる皮膚炎を起こす、細菌の繁殖を促してしまうなど皮膚トラブルが増えてしまいます。

やむをえずラップを使用する場合、張り替えの頻度は頻繁に行い、皮膚の異常を感じたらすぐに取り外してください。

正常な工程

3.保湿+遮光

ここからはワセリンを塗って保湿を続けます。上皮化したあとは周りの肌色と同じ色調に戻るまで保湿と遮光(光をあてないこと)を徹底すると、傷が綺麗に治ることが期待できます。

特に紫外線を当てないことにより傷跡が残りにくくなります。具体的には3ヶ月から半年程度は傷部分に直射日光を当てないように心がけましょう。

 

湿潤療法が向かない傷は?

1. 感染した傷

傷が感染したかを判断するのはなかなか難しいのですが、傷の外側が赤く腫れてきた、傷の周囲に痛みが出る、膿が出るなどの症状がでたら感染を疑いましょう。傷の内側が赤くなることは自然な治癒の工程ですが、周囲まで痛みが出て腫脹・熱感がある場合は感染を疑います。この時は密閉タイプの絆創膏ははがし、通気性の良い従来型の絆創膏を貼りましょう。

2. 深い傷

深い傷の場合でも、湿潤療法は有効です。しかし、皮膚の下の組織まで及ぶような傷は、医療機関での治療が必要になります。例えばナイフで深く切ったような傷は縫合が必要ですし、血管まで損傷している場合は止血が必要になります。深い傷は医療機関を受診しましょう。

 


(♪今日の料理エンディング曲)

この湿潤療法は擦り傷だけでなく、火傷や靴擦れにも使用できますので、是非覚えておきましょう。

次回もお楽しみに!!

参照:

Evaluation of BepanGel Hydrogel Efficacy and Tolerability Using an Abrasive Wound Model in a Within-Person, Single-Center, Randomized, Investigator-Blind Clinical Investigation

あたらしい皮膚科学 第3版 

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